555(ファイズ)

映画版555-パラダイス・ロスト-の小説。
原案:井上敏樹ですが、文章は桜庭一樹が書いているという、ある意味では珍しい本。
先日小説を借りるついでに検索したら開架にあったので、とりあえず物は試しと借りてみました。
内容としては、カイザファンと水原ファンにはうれしい内容…かな?!

<続く>
※ちなみに桜庭一樹作品は「砂糖菓子の弾丸は打ち抜けない」しか読んでません。

内容はほぼ映画と変わらず…かと思いきや、サイガはかけらも出てこない。
また、映画ではさしたる見どころもなく死んだ草加が仲間を守って死ぬという改心を見せたり、自業自得で死んだ水原が改心を見せ生存するなど、一部の人物にとっては救いのある内容となっている。
テレビ本編とキャラの性格が同じな部分もあり(海堂・結花)、映画本編とは多少違う部分もあるが、ほぼ大筋は映画と同じ流れで繰り広げられる。
戦闘はあっさり目の描写で、映画で言う前半~中盤にかけてが重点的に描かれていたような印象。
しかし武器の説明は微妙に詳しかった。仮面ライダーじゃなく、解放軍の使用する武器についてだが。
戦闘シーンは描写が一応はあるが、一発の蹴りでオルフェノクが死ぬ、というような記述がメインだったり、戦闘中のライダー以外の人間の描写の方が分量が多かったりと戦闘自体はあまり楽しめない。
アクセルフォームもブラスターフォームも出てこない最終戦なんて…!

読んでみての感想は「やっぱり井上が書くべき」ということか…
大体の内容、要素は映画があるため及第点ではあるのだが、濃密な人間関係がジュブナイルで薄められて、555のいいところを多少殺してしまっているようにも感じた。
あと、前半~中盤に時間をかけすぎて後半のやっつけ感が半端ない。
作中人物の会話は木場にものすごく違和感があった。木場さんのあの微妙に丁寧な感じが上手く出せていなくて、特に死亡シーンの違和感はぬぐえなかったように思う。
木場については基本的に描写不足で、最低限のラインしか書いていないために映画の水準まで達していなかった。
巧については映画水準には描写できていたと思う。
でも、巧がオルフェノクだったということを自覚してない部分はどうかな…と思ったけどな。
映画でも「知っていた」とは言及されはしなかったように思うが、知らずにオルフェノクでした、と知ってて戦っていたのでは重みが違うような…というか、巧の存在そのものがまたちょっと違ってくるような気がするんだよな。

しかし草加については、真理に対する思慕含みで人間らしい描写があり、幼いころに抱いていた優しい心を見せるシーンがあったところが救い。
草加のねじまがった、他人をバカにするように拒絶を見せる性格は、幼いころに親に捨てられたという暗い闇がのしかかっていたせいであった。
彼はそんな境遇に負けないために数々のプレッシャーに打ち勝ち、総てにおいて秀でた能力を手に入れた。
そんな彼は「自由に生きる」とひょうひょうと気ままに生きる巧の存在が許せなかった。
しかし、真理の心で光を見出した草加は、巧のように生きてみようと思った矢先に真理をかばい倒れる…
というような感じ。
草加さん、真人間に…!!w
ちなみに、この小説での草加は真理に異常な執着を見せることは無かった。幼馴染程度の関係であることで、より一層普通っぽさが出ていたのかもしれない。
ちなみにテレビ版の草加さんが好きな人からしてみたら、こんな草加は草加じゃねえ!と言われるような気もしないではないが、小説版キバの753のような改変だと思えばどうってことは無いのである。

水原も映画とは別人のよう。
今ではオリーブオイルの王となった速水もこみちが演じたクズというべき役柄だったのだが、この小説だと割とまともに心情が描かれており、最終的には「世界が変わる瞬間」を目撃する生き証人となる。
水原は真理に強い思慕を抱いており、救世主願望とも取れるベルトへの固執を見せる。
しかしそれは、真理が抱く「巧」という絶対で唯一無二の存在への嫉妬でもあった。
彼は巧がオルフェノクではないかと疑ったり、解放軍内でもめ事を起こしたりとあまりいい描写は無かったが、最終的にはオーがとファイズの戦いを目撃し、ファイズがオルフェノクであることを知り、今までオルフェノク対人間=ファイズの構造であったこの世界が、まったく別の様相を呈すことを予感する人間の一人となる。
敵地に乗り込む巧が「怖い」とこぼしたことに共感を覚えたり、彼なりに一応考えがあって行動しているという行動原理が描かれていたり、映画より断然扱いが良かったキャラと言えるだろう。

と、いろいろ文句を言いつつもまあそこそこ楽しめたかな。
パラロスって上映当時観に行かなかったのが悔やまれる作品だなーと思った。
ラストカットの「行けるところまで、行くさ…」からのJustiφ'sアクセルミックスはたまらん!…って、それ映画の話だけど、思い出せたのでよかったかな!

でも読むなら絶対「正伝 異形の花」の方がお勧めだけどね!!
一応カバーしておこうと思っていたので、読めてよかったです。