色々と複雑な気分で視聴した作品でした。
今の仮面ライダーと比べるとものすごく異色な気がするけど、昭和から続く「仮面ライダー」の名の正当な系譜のような気がします。

<続く>

・総評
『仮面ライダー』という作品を平成の世に復活させただけはある、骨太で重厚な作品でした。
個人的には、見ごたえはあったけど今一つ乗り切れなかった作品だったかな、という感想です。
グロンギ語や古代語、ヒーローもの王道である技名を叫ばない、警察の活躍など、魅力のある素材は実に多かったのですが、キャラクターに一部感情移入できなかったところがありました。
五代君がいい奴過ぎて、私には眩しすぎたのかもしれません。
といっても面白くなかったわけではなく、なんというか「ヒーローものを見ている」というよりも、「ドキュメンタリーを見ている」ような気持ちになった作品でした。
子供向けというよりは断然大人向けながら、アクションのカッコよさは子供が憧れるに十分で、当時の熱狂がしのばれる作品でしたね。

・ストーリー
昭和ライダーの世界観から、完全にご都合主義を取り除いてリアリティを追求した結果の作品、という印象を受けました。
昭和世代のお約束をリアリティを交えて踏襲しているところもあり、なるほどと思うところも多かったです。
ただ、「正義のヒーロー」としての仮面ライダー像というよりは、力を持った一個人、そしてそれを支える人々の奮闘というのが正しいように感じました。
直接グロンギと戦わない人たちの日常も描くことで、「グロンギ事件はテレビの向こう側」というメタ的な話もいくつかあって、実際に起こる事件を取り扱っているような感覚すら受ける、そんな物語作りだったなと思います。
現代日本から考えれば超科学だし、無いなって思うこともあったりはするけど、そのあたりに説得力を持たせる内容だったのは、今のライダーたちにも見習ってほしいですね!
人間の科学では及びもつかない力を持った存在と戦わざるを得なくなった人々の苦しみや哀しみはもちろんですが、そこから得るものもきちんと描いてたところに希望があってよかったです。

・登場人物
作中人物は基本的にいい人たち、という印象でした。
それは相対する敵が純粋に人間とは別種の「悪」として存在してるからかもしれないけど、人間同士の軋轢がほとんど無くて、マイナス感情を感じるシーンがそれほどなかった気がします。
基本的に「戦う人々=警察たち」と「周りの人々=みのりたち」は全く役割を分断されていて、出てくる人々が皆直接的に物語に関わってるだけじゃないというのは意外でした。
間接的に事件にかかわる人々との日常を描くことが、リアリティにつながっていたのかなと思います。

あと珍しく、主人公である五代はグロンギと個人的な因縁がないんですよね。
巻き込まれて戦うことにはなったけど、グロンギに身近な人を殺されたり、自分が改造されたり、グロンギのせいで記憶を失ったり、といった「主人公と敵組織の因縁」がほとんどない。
グロンギに襲われはしたし、引き合うものはあったけど、きっかけ以降の因縁は戦いでつくられていったように感じました。
それは仮面ライダーの流れから見れば、結構異色なんじゃないでしょうか。
だからかもしれないけど、五代君はあまりにもいろいろなものを背負いすぎてて、カッコいいんだけど、見てて可哀そうになっていました。
五代君は見知らぬ人々がグロンギの脅威にさらされ、死んでいくことに純粋に怒りを覚えて戦っていて、その姿があまりに悲痛で気の毒でした。
力を得た責任なのかもしれないけど、ただ力を得ただけでそこまで戦わなくてはならないというのがどうも気の毒で…
平成ライダーといえばエゴの塊みたいなやつらが山のようにいますが、彼に関してはもっとエゴイスティックになればいいのに、と思いながら見てました。
「人々の笑顔のため」という行動原理はわかるのですが、五代自身の笑顔が時々曇っているような気がして、複雑な心境でした。
これも後続のライダーに毒されてるせいでしょうか。
結局、物語を通して語られるのは「暴力の否定」だそうですが、そのテーマにはふさわしい主人公だったのかなぁ…と見終わってから思いました。
グロンギだけではなく、クウガ自身の力に終始蹂躙され、そこから解放されることでやっと自分を取り戻した五代。
暴力では得られない笑顔を、最終回でやっと取り戻せたならいいな、と思います。

一条さんは初代における「滝和也」的な相棒の立ち位置ですが、彼のカッコ良さが物語全体を引き締めていたんだなと思いました。
一条さんは人間だし、力もないけど、警察の急先鋒として恐れずグロンギに立ち向かっていく。
戦績や状況で見れば、警察はグロンギに負けっぱなしでいいところがほとんどないんですが、一条さんが五代とともに奮闘することで、「警察だって無能じゃない」というのが強く印象づいたと思います。
結果的に、人間=警察は神経断裂弾を生み出し、グロンギに対抗できるようになりましたが、精神面では一度たりともグロンギに遅れはとっていなかったなと感じました。
現実もそんな警官だらけだったらいいのにwとは思い知らされましたが。
一条さんの渋みが、五代のどこか掴みづらい、のんびりとした空気と上手くマッチしてて、いいコンビだったなと思います。
それにしても、一条さんの頑丈さは本当に目を見張るものがありましたw
本家滝和也も相当頑丈でしたが、やはりライダーの相棒は身体能力に優れていないとなれませんねw

ちなみに私は椿先生も好きでした。
五代の「大丈夫」という言葉を信じていないわけじゃないけど、無理をさせないようにストッパーとして動いていた印象があり、いい医者だなと思っていました。
戦い方は違うけど、彼もまた五代とともに戦っていた戦士の一人でしたね。

・グロンギという存在
グロンギという存在はクウガの中で純粋に倒すべき「悪」として描かれましたが、グロンギの行動原理がまったく理解できなくて、もやもやしたまま終わってしまったという印象が残りました。
グロンギは人間とほぼ同種ながら、戦闘性が高い残虐な性質をもつ種であることはわかりましたが、仲間を失いながらも「ゲゲル」にあれほど執着する理由が見えませんでした。
種の個体数が絶対的に減少している状況から、種を増やそうとする行為をするならわかるのですが、その状況下でゲゲルを優先する理由が解らず、敵の行動原理自体の理解については、終始浅いままで終わってしまいました。
種をあえて減らすダグバの行動もよくわからなかったし…(ゲームの邪魔になるものは処分、というのはわかるけど、それがダグバにとって何の利点をもたらすかが理解できない)
結局、力に溺れて破滅願望に囚われた種族ということなのでしょうか?
敵の行動についての理由づけがなぜか曖昧なままだったので、そこだけ残念でした。
もしかすると、グロンギたちが求める「力=大いなる闇の力」を手に入れた先には、「何もない」ということが、暴力を否定するこの作品の出した答えだったのかもしれません。
彼らが明確な行動原理を抱いていれば、私の見方ももう少し違ったかもしれないですね。
あとグロンギ語は「大体言ってる内容はわかるけど解説してほしい」とずっと思っていたので、字幕有で見たかったです…

・アクションのすごさ
肉体派なアクションの数々が本当に凄かったです。
小道具、大道具両方を使ったダイナミックなアクションの数々は実に見ごたえがありました。
魅せるアクションながらリアリティのあるダメージ描写も欠かさず、オダギリジョーの演技と相まって、迫真の戦闘シーンが演出されていたと思います。
戦闘シーンに関しては、CGやワイヤーで誤魔化しがちな昨今のアクションよりも、追及しているものがあって美学を感じました。
バイクに焦点がしっかりおかれているのも良かったです。
クウガはほぼ毎回といっていいほど五代がバイクに乗るシーンがあり、連絡もバイクを通してだったので、販促的な演出は少ないながら「ライダーの愛機」という印象が強く残りました。
あとゴウラムが可愛かったです。
しかし、昔はホントに馬にくっついてたのか?!とは思いましたがw

・印象深いエピソード
グロンギにあこがれていた蝶野の存在は、クウガの中では異色な存在だったけど、クウガを彩るには必須の人物だったのかなと思います。
人間のマイナス感情を一身に背負った彼と五代の対比は印象に残りました。
最終的に自分がどうするべきかを考えて、立ち直ったところも良かったです。
夏目美香のエピソードはどれも好きじゃありませんでした。
最後にフルートを吹きに東京に出てくるエピソードは、「暴力への恐怖」というのを表現するためだとは思うんですが、一条さんの頑張りや刑事としての職務を考えると、私としては今一つ受け入れがたい展開でした。
この状況下であまりにも甘すぎる、また自分のイメージだけで他人を判断しすぎる狭窄な視野が、相手が子供とはわかっていても腹立たしかったです。
あの後、一条さんに対して直接謝ってないところもマイナスでした。
二人とも当事者なのに部外者、という絶妙な立ち位置の体現者でしたが、その描かれ方は人物像とは反対の印象を受けたかなと思います。

・主題歌
もうたぶん散々語られつくしてると思うけど、本当に凄い歌詞だと思います。
仮面ライダーの歴史が途絶えていた時代から、新しいヒーロー像を作り出そうという意欲が織り込まれてて、その当時のスタッフの意気込みが聞くだけで伝わってくる。
仮面ライダーの「伝説は塗り替えるもの」。
仮面ライダーよ、この時代に「熱く蘇れ」。
テレビヒーローとしての途絶えたがゆえに新作が作られていなかった「恐れるだけの歴史をゼロに巻き戻す」。
既存のヒーロー像を「俺が越えてやる」。
仮面ライダーを切望している視聴者、そして制作陣の熱い想いが乗った主題歌で、改めてクウガを見るにあたり、感動した主題歌でした。
制作陣が何をしたかったのか?というのが、この一曲でなんとなく伝わってくる気がします。
やっぱり藤林聖子は凄い…と改めて思い知らされました。
きっと高寺Pの熱い想いと、藤林聖子さんの予言の力がこの歌を産み出したに違いないw


色々と書きましたが、一言でいうと「考えさせられる作品」でした。
単に面白いとか凄いとか、そういうのとは別種の感情が湧き上がる作品だったなと。
今の仮面ライダーからは想像がつかない物語でしたが、きちんと見ることができて良かったです。
色々視点がズレてるかもしれないですが、エンタメ脳な私が見るとこういうところに注目してるんだよということで、ここはひとつ。