キュウレンジャーは至る所にチャレンジ精神と工夫を垣間見た作品だった気がします。
ある種、試金石的な作品といえるのかもしれません。

これを機に40年間続いた戦隊ヒーローが新しいステップに進むなら、いちファンとして非常に楽しみですね。

<続く>


・新戦隊元年?
良い悪いは別として、やることなすこと全部「今までやってない」を詰め込みまくってましたね。
細かく分析していくとやってることもたくさんあるし、戦隊のセオリーは崩してないんだけど、こういう組み合わせではやってないとか、視点を変えるとやってないとか、長期的に体制を維持したことがないとか、そういう色んな新しさがあったと思います。
私も全部戦隊を見たわけじゃないので断言はできませんが、新しい要素が増えるたび「やっていいんだ?!」っていう驚きが楽しかったです。
キュウレンジャーは今まで戦隊慣れしてない新規の方に好評だった(ソースなし)という話もあるようなので、戦隊っぽくないところが受けたというのはあるのかもしれません。話も戦隊っぽくなかったし。
またその逆もしかりで、今までのファンはしっくりこないところがあったのかもしれませんね。
ただ今回のようなチャレンジ精神が戦隊の歴史をつないできたわけで、ある意味では原点に返った作品作りだったのではないかと思います。
あ~新しい時代始まるな!っていう、ジェットマンやガオレン的なターニングポイントは「ここ」でしょうね。良くも悪くも。
次作が新しい戦隊ヒーローの描き方を模索をしているあたりからも、それがうかがえます。
時代とともに移り変わってきたヒーロー像。新しい時代に、どんなヒーローを生み出してくれるか、今後が楽しみです。

・意外な下準備の周到さ
その場の勢いと高めのテンションで後先考えずにやってるかと思いきや、意外にも最初から最後まで細かく考えられていた作品でした。
もちろん粗はあるものの、過去の展開が繋がっていくのは個人的には爽快感がありましたし、そこに至る道筋が最低限想像しうるように作られていたというのは良かったと思います。
人数の多さという点では尺足らずな部分も多々あったとは思うのですが、それでも個々人のキャラクターが没個性化しないよう努力されており、キャラメイクも入念に下準備していたであろう姿が想像できたのは好印象でした。
今回の多人数制でよかったところは、普段バックヤードの仕事が表だって描かれていたことだと思います。
戦艦の整備、市民の非難、生活環境の充実等々、通常の戦隊だとなかなか描けない非戦闘員の努力的な部分はもちろん、メインで戦闘しないメンバーにもできる限り役目が与えられており、戦闘のみがヒーローの仕事ではないという意識が伝わってきたのが良かったです。
あと、多人数だからこその長期間的な離脱・合流含めた様々な展開が可能だったのも面白い取り組みでした。
作中の活動エリア、時代、人数とすべてがだだっ広い、大ぶろしきにもほどがある作品だったとは思うのですが、「できる限りの工夫で少しでも世界観を広く見せる」という努力は、昭和的なアナログな努力を感じるというか、やはり世界観を作るためにはアイデアと工夫が必要だと再確認できました。CGとセリフだけではやはり限界がありますもんね。
地球とは異なる星を描くという部分ではマット画という古き良き手法での演出、エキストラの扮装、看板表記などアナログな努力が涙ぐましく、最後まで徹底していたのが良かったです。

・ラッキーの「キー」は鍵の「キー」
キュウレンは赤偏重主義的な戦隊と言われているらしいのですが、私はそうは思いませんでした。
キュウレンは「赤が中心になる」という大原則が強調された作品でありましたが、赤意外に役目がなかったかといわれるとそうではありませんでした。
赤偏重主義的というのは、赤だけいればあとは替えがきく、赤以外が無個性化、または記号化された戦隊だと思います。
キュウレンは総ての中心にラッキーはいましたが、かといってラッキー以外が誰でもいいとなるほど無個性化されてはいませんでした。そしておそらくラッキーだけではあのラストは迎えられなかったと思います。
これは一話ごとの感想でも書いたのですが、ラッキーはいわば歴史を変えるためのカギであり、各人の次のステップへのきっかけになるキャラなんですよね。
それまで動かなかった歴史がラッキーの働きかけによって動くという役目を担っていたため、ラッキーの行動がストーリーの中心になることが多く、赤偏重な印象が強いのだろうと思います。

・歴史改変の意味
「過去篇の意味が解らない」というコメントが散見されましたが、過去篇の最大の理由は「アイテムの追加による新しい歴史への切り替え」だったと思います。
過去へ行く前の「歴史A」では存在することができないサイコーキュータマ、オリオンボイジャーという戦力が「過去歴史A」で追加されることにより、戦力が追加された「歴史B」に切り替わりました。
「歴史A」では戦力的にアルマゲに勝てるかどうか不確定だったのが、「歴史B」だと、追加戦力がある分勝てる見込みが高くなりました。
つまり、大局的に見ると歴史A/Bにおけるジャークマターの支配にはほぼ変わりはないものの、ラッキーたちの戦力が格段に上がるという部分的な影響が存在しています。
また、オライオンが死亡することによってオリオンボイジャーが生まれたため、オライオンの死亡は「歴史B」上では戦力追加のため必須であると考えられます。
歴史AとBの切替は間接的にジャークマターの敗北につながっており、本編最終回にたどり着くためには必須の展開だったとも取れるのですが、いかがなものでしょうか。
え?タイムパラドックス?知るかそんなもん!(毎度おなじみ)
オリオンボイジャーは最終回に使わなかったし、サイコーキュータマも壊れたじゃんと言われればそれまでですが、サイコーキュータマがないとそもそもあの体内に12個キュータマ集める作戦が実行できないから…(ラッキーが変身できないので)
私としては、あれがあったからこその今なんだろうなと思いましたけどね。
だってそもそもキュウレンジャーの歴史自体が「未来から来たキュウレンジャー」という存在がないと発現しないわけで(以下こんがらがるので打切)

・よくなかった点
着ぐるみと素面のキャラが混在するということで、最初は着ぐるみの出番が少ないのではと不安だったんですが、むしろ素面が掘り下げできないという事態に。
着ぐるみのキャラのクセが強すぎるw
個人的にはスパーダはもっと掘り下げてもよかったと思う。いいポジションだったからなおのこと。ただ、最終回でツイッターのトレンド入りするぐらい個性を発揮してたのは役者の努力あってのことだね。
ハミィはもっと他メンバーとの濃い絡みがあっても良かったな。ミナティ絡みは良かったと思うんだけど、最終回ではメンバー中一番どっちつかず感が出てしまった気がする。
あと、全体的な話運びとしてトータルで見ると理解できるけど、その場その場だと疑問点が残るとか、これでいいのか?と不安になるような部分は結構あったと思う。
ただ、振り返るとなるほど~って感じではあるんだけど、しっかり見てないまたはエピソードを反芻しないと気づきにくい部分は結構あった気が。
一年通しての物語づくりとしてはそれでいいと思うんだけど、最近の傾向として、伏線の回収より瞬間風速が称賛される傾向にあるので、評価されづらいところはあったのかもしれない。
ただ個人的には瞬間風速だけに固執すると全体が崩れるので、伏線を大事にする傾向は維持してほしいと思うんだけど、描き方は工夫がいるのかも。
あと大きな問題としては尺が足りてない。それに尽きる。
シーンについても流れについてもキャラについてももっと時間が欲しかった。あと2クールぐらいあってもよかった。
あとワンシーン足したら絶対説得力増すのに!っていうシーンが結構あったもんな。
物語の流れ、キャラの心情的には順を追っているにもかかわらず、性急なせいで分かりづらいパターンが多かった。惜しい。その辺引っかかる人は多かったと思う。
いいところでも挙げたけど、キャラの合流、離脱が多かった分、丁寧に書くべき場所が書き足りなかったところはあった。
代表的なのはスコルピオの改心とナーガ闇落ちまでの流れかなぁ?
あれはもっとフォローしてほしかった。
あと88星座系のダイカーン、カローが出てこなかったのは残念だった。あとキュータマが全部そろったところは見てみたかった。まぁ無理だろうけど。
それと「リベリオン」自体の組織構造が最後までいまいちよくわからなかったのは残念。キュウレンジャーと同様に、リベリオンの別組織が登場したりすればまた違う深みが出せただろうと思うのですが…その辺りは残念でしたね。
あと最大の残念なところは大和たちのキュータマダンシングと胃痛パートが見られなかったことだよ…帰ってきてー!ジュウオウジャー!!!(VSを今だ諦めきれない)

・特撮部分
全然語ってないけど、独自色のあるスーツとか主観カメラの積極的導入とかロボ戦の背景の宇宙感とかリュウボイジャーの圧倒的ダイレンジャー感とか好きでした。
そもそもロボ自体がかなりスタイルが良くてよかったです。無理やり全部合体がなかった分、キュータマジンも綺麗にまとまったし。
腕・足の自由な換装はガオレンジャーの発想の進化系で面白かったですね。
絵面の整合性を無視したリュウボイジャーの強制場転は、何を言われようとかっこいい特撮を撮りたいという気合が伝わってきたしw
各アクターの個性も強かったので、戦闘にもボリュームがあってよかったです。
何より感心したのが、12人いて小太郎の戦闘アイテムだけマフラー(未発売)という采配。
本来なら武器を他と被らせてもいいけど、あくまで独自性を追求した姿勢は評価したい。
分かるよ玩具出さない理由は…きっと売れないからね、子供が変身したキャラは…と、傾向と対策を練った挙句の思い切りは感心。でもそのおかげでシシオリの武器呼び出しシーンがめっちゃシュールで笑うwww
あと全体的に「タマ」と「キュー」に振り切ったネーミングセンス、ともすればねじ込んでくるセリフの数々と小ネタはとても良かった。
モチーフの意識づけはしつこいぐらいでちょうどいい。
これまでの作品を参考に練り上げたであろう玩具回りも、プレイバリューをかなり意識していたのが良かったと思います。


不満もまぁまぁあるけど、満足感のほうが勝った作品でした。
いろんな意見があると思うのですが、私が評価したいのは「こういう道筋でこういうオチのためにこういうことをやろう」という事前準備がちゃんとある。そういう物語づくりができるPやライターが増えただけでも私は嬉しい。長期的に見て。
私は初担当初タッグのわりに、最低限それができてることに感心してました。
作品単体ももちろん楽しめたんですが、スタッフのフレッシュさと成長が感じられる作品だったのが良かったと思います。
いや、外野のくせにエラそうな意見ですけどもw
一年間、予想外だったり想定内だったりしながらも、楽しく見られて良かったです。
まだまだファイナルまで抜けきらん。もうちょいキュウレンワールドを楽しもうかな。

しかし最終的にメインライター毛利さんがたどり着いたところが、結局キタムランドだったのホント草。
キタムランドは永遠に開園し続けるのだ…




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